寒い日の夜




夜着に着替えさせて、彼の脱いだものを畳んだり衣桁に掛けたりしていたら、背後からぽふり、と抱きつかれた。
「あったかいなー…」
背に懐いたまま、政宗は呟く。小十郎は腹に回された主の手に、自分の其れを重ねた。
「梵天丸さまの頃から、寒がりでしたからな、我が主は」
あの頃は、主が起きる前に火鉢を熾したり、温かい飲み物を用意しておいたり、冬の朝は忙しかった。
――――勿論、全く嫌ではなかったが。
そんなことを思っていたら、主のくぐもった声が聴こえた。
「でも、起きるといっつもお前が居て、あったかくしててくれたから、寒い日は嫌いじゃなかったぜ?」
それに、寒いって言えばお前がずーっと抱き締めてくれてたからな、そう言って政宗は笑う。寒い日の朝の記憶は、ほわりと温かい。それを愛しい主と共有できる喜びを噛み締めた。
そうして、今は。
「…今宵は、寒うございますな」
確かめるように、そう言って振り向けば、悪戯っぽい目が、きらりとひかりを弾いて、見上げてくる。
「おう。だから、…ちゃんと朝までいろよ?」
抱き締める腕に、自然に力が入った。
「――――御意に」




「あー、さむっ!!今日めちゃくちゃ寒いよなー、炭まだあったかなぁ…」
こんな寒い日は、一杯引っ掛けて布団に潜り込むに限る。そう思い立った成実は、厨で酒を調達して、羽織の前を掻き合わせながら廊下を急いでいた。
すれ違う何人かも、同じように徳利を持っていたりして、皆考えることは同じだなーなんて思うとちょっと可笑しくなる。
「なんだ、寝酒か」
自室へ向かう途中で、綱元に行きあった。「まあね〜」と応えると、ふふ、と何故だか笑われた。
「…何??何か笑われるようなことした?俺」
「いや、今夜は冷えるな」
「…?うん、」
「明日も、寒いだろうな」
「…???うん、多分」
笑ったままことばを紡ぐ綱元を怪訝そうに見ていたら、――――何だか嫌な予感がしてきた。そして、

案の定。
「明日の朝は、寒いからって夜這いに来るなよ?」
「行かねぇよっ!!」
つかあん時のアレは夜這いじゃねぇっつーの!!つい大声で叫んで、衆目を集めてしまった成実だった。



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『さむいひのあさ』後日談的な。
相変わらず成はオチ担当で可哀想ですwwwいつか救済してやらないとな、と思いつつ、殆ど救済したことがないことに今気付きました。
(20091230/ナガノ)

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