秋の風物詩。




それは高く澄み渡った秋空の下行われる収穫に感謝する行事だった。

広瀬川の河岸に大きめの石で組まれたかまどにはすでに火が起こされていた。
城から運んできた大鍋にもそれぞれのかまどの横で出番を待っている。
政宗は準備が整いつつある周囲を満足そうに見回すと決まり文句を叫んだ。

「Are you ready, Guys?」
「Yeeeeeah!」
「これから芋煮partyをはじめるぜ!」
「Yeeeeeah!」

「ねぇ、奥州っていっつもこんなノリなわけ?」
心底理解できかねるといった表情で迷彩模様の衣をまとった忍は隣の主に囁いた。
その主はと言えば、伊達軍と一緒になってコブシを振り上げているしまつ。
いつものとおり主の果し合いに付き合って甲斐から奥州に来てみれば、いつもとまったく違うこの状況。
俺様って実は場違い?と佐助は少し落ち込んだ。


そして事件は勃発した。




「は?味噌で味付けするなんて聞いたことねぇよ?!それって味噌汁だろ?!」
「何を言う!某の生まれ故郷では味噌味と決まっている!醤油など邪道だ!!」
「牛肉だ!」
「いや、豚肉を使う入れるだろ普通?!」
各々材料を切り終わったあたりから楽しいはずの芋煮会はなにやら不協和音を奏で始めていた。
曰く陸奥風か出羽風かで家臣が言い争いを始めたのである。


「ah〜?何を揉めてるんだ?」
手に大事そうに桶を抱えた政宗が騒ぎの中心へ寄って来た。
一足早く現場に来ていた小十郎は呆れたように主に答えた。
「…どうやら味付けやら材料で揉めているようですね…。」
「どっちでもいいじゃねぇか、美味いんならよ?」
「まったくです…。」
「Ok 小十郎それぞれ作らせてみようぜ」
「承知。ではそのように。…ところで政宗様…先ほどから何を抱えていらっしゃるんですか?」
「これか?これはな、はらこめしのはらこだ!」
「はらこめしなら城で炊き上げて持って来ているはずですが?」
「…分かってねぇな、小十郎!はらこめし作りで一番楽しいのははらこの皮をむく作業じゃねえか!それを最後に大事に取っておいた!これから仕上げだぜ!!」
「……申し訳ありません、その感覚…小十郎にはとんと理解できませぬ…」
「Jesus!はらこの下ごしらえってのはな…煮だった湯を注いで優しくかき回し、何度も水を替えてすすいだ後、少し白くなったはらこに塩を入れて混ぜると一瞬にして鮮やかな紅色になる…!!それが楽しいんじゃねぇか!!」
「…然様で…」
遠い目をしてはらこの下ごしらえについて熱く語り始めた主に、忠義を旨とする小十郎ですら曖昧にうなずくことしかできなかった。



騒がしいながらもそれぞれがそれぞれの役目を終えて芋煮が出来上がった。
すっかり空腹の幸村は目をきらきらさせながら大鍋を覗き込んでいる。
「真田の旦那…そんなにうろうろしなくても、ちゃんと旦那の分ももらえるって!」
「佐助!醤油味も味噌味もどちらもおいしそうだぞ!!」
「…あ〜はいはい…もう全然聞いてないね…」

そこにたすきがけの姿が妙に似合った政宗がやってきた。
盆には幸村と佐助の分の料理をのせている。
料理は白い湯気を上げみるからに美味しそうだ。勿論先ほど最後の仕上げをされたはらこめしもそこにはあった。

盆を佐助に渡すと政宗は家臣たちの集まりの中心の方に戻っていった。
その政宗を入れ替わりの様に幸村が佐助の方に駆け戻ってきた。

「おお!『はらこめし』とやらも美味そうでござる!!」
「そうだね〜」
「今日は政宗殿と手合わせはできなんだが、たまにはこういうのも良いな、佐助」
「…真田の旦那がそんなこと言うなんて珍しいね」
佐助が言葉を返したとき既に幸村は料理に箸をつけ始めていた。
佐助も負けじと箸を持ち上げた。
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芋煮会って秋のメジャーな行事だと思っていたミズキさん…県外のお友達に「川原で豚汁つくるの??」と不思議そうに訊かれたのを思い出しながら書きました…。
(20090921/ミズキ)

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