バブバブデビル




小十郎は多分今人生最大の危機に陥っていた。
「小十郎が良いって言ったんだろうが!」
元服したての主が小十郎に馬乗りになって叫んだ。
宴で酒を飲み過ぎたのだろうか、赤い顔の主は目が据わっている。
「ぼ、梵天丸さま」
「今日から政宗だ!いつまでも子供扱いすんな!」
「…はぁ、そうでしたな…それよりも小十郎の上から退いていただけませんか?」
「大人になったら良いって言っただろうが!」
なんの事だったろうか、と小十郎は記憶を探って一つ思い当たった。


出会った当初こそ避けられたりもしたが、梵天丸は小十郎に良くなついた。
守役としてなつかれるのは決して損なことではない。だがそのうちの困ったことになった。
「こじゅうろうがすきだ」
「小十郎も梵天丸さまをお慕いしておりますよ」
それを聞くと梵天丸はぎゅうと抱きついてきた。そして


ちゅう


「…なななな何をなさいます梵天丸さま!」
小十郎は抱きついていた主を勢い良く引き剥がした。
そんな小十郎を不満げに見つめた幼い主は拗ねたように口を尖らせた。
最初は警戒されてばかりでなかなか見られなかった年相応の幼いしぐさに小十郎は表情を和らげたが、主はそれも気に入らなかったらしい。
目尻をきっと吊り上げて小十郎を睨み付けた。
「こじゅうろう、うそをついたな。ぼんてんをすいてなどいないではないか!」
「梵天丸さま、接吻というものはもっと大人になってから好いた相手になさるべきかと小十郎は思いますよ?」
優しく頭をなでながら諭すように言うと怒りで頬を赤く染めた梵天丸は捨て台詞を残して走り去った。

「そのことばぜったいわすれるなよ!」

後には苦笑した小十郎だけが残された。


そんなことも有ったな、などと感傷に浸る暇は何処にも残されていなかった。
今大事なのは目の前の主を落ち着かせることである。
相変わらず馬乗りのまま小十郎を睨み付けている主の頭を優しく撫でて小十郎は言った。
「政宗さま、今でも変わらずお慕い申し上げておりますよ」
馬乗りの主は小十郎が昔の約束を思い出したことに少し満足したようだ。
先程よりも落ち着いた様子で小十郎の胸にぺたりと頭をつけた。
小十郎が頭を撫で続けていると政宗はうっとりと目を閉じた。
急に静かになった主の顔を恐る恐る覗き込むと年齢より幼い寝顔がそこにあった。


頭が痛い。
朝日が眩しい。
飲み過ぎて宴の後の記憶がかなり怪しいが、小十郎を押し倒したのはぼんやりと覚えている。
ふと違和感を覚えて上掛けを捲ってみると一糸纏わぬ自分のからだがそこにあった。
「!!!!!!」
政宗は声にならない悲鳴を上げた。


廊下でにやにや笑っている綱元とすれ違った。
すれ違いざま綱元は小十郎に声をかけてきた。
「景綱、昨晩は何ともなかったか?」
黒幕はこいつだったかと腹のなかで思いながら小十郎は答えた。
「…きつくお灸をすえてやったから当分大人しくなさってるでしょうな」
小十郎の答えを聞いた綱元は声をたてて笑った。
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一応言い訳。こじゅは何もしてません。着物を剥いただけです(笑)
(20091207/ミズキ)

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