ごめんねダーリン
「ちょ、・・・Stop!!」
制止の声に、小十郎は政宗の首筋に埋めていた顔を上げた。見ると、頬を朱に染め、潤んだ目で自分を睨みつける政宗と視線が合う。
「や、・・・やっぱ、無理・・・」
見詰めていると、ふるふる、と首を振られた。小十郎は苦笑し、主の襟から中に差し入れていた自分の手を抜いた。
長年秘めていた想いを、ようやく通じ合わせて早ひとつき。自分からじゃれるのは平気なのに、この主は、どうも『触れられる』のにはまだ抵抗があるようで、くちづけ以上になかなか進めないでいる。
そんなところも可愛い、などと言ったら、綱元や成実には、多分、呆れられるだろう。
「判りました。・・・また、お誘いくださいますか?」
素直にこくん、と頷いてから、政宗は照れ隠しのように抱きついてきた。
このまま組み敷いてしまいたい気持ちを抑え、柔らかい髪を梳きながら、精一杯優しく、声を掛ける。
「さ、もう夜も更けました故、・・・おやすみなさいませ」
行灯の火を消し、一礼して障子をたてた小十郎の、ゆっくりとした足音が、遠ざかるのを聞きながら、夜具のなか、政宗は溜息をついた。
(・・・情け無ぇ・・・)
自分でじゃれかかっていたときは、そりゃ多少はどきどきしたりもしたが、小十郎に触られているときはそんなもんじゃない。全身が心臓になったかというくらい、呼吸が出来ないくらい、どうしようもなく、どきどきどきどきしてしまう。
せっかく想いを通わせ、思うまま触れられる、触れてもらえる、というのに。
いつも、途中で制止してしまう。
(だって、こんなになるなんて、俺だって思ってなかったんだよ・・・)
こんなに、死にそうなくらい、どきどきすることがあるなんて。触れられているだけで、頭が真っ白になるなんて。
はあぁあ、と深く溜息をついてから、ごろり、と障子のほうを見る。それほど月齢のいっていない月のひかりが、仄かに差し込んでいた。
「・・・ごめん、な」
ことばは、静かな闇に、吸い込まれていった。
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(20091215/ナガノ)
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