めろめろマシュー




「うそでもいいから、ぼんてんのことをすきだといってくれないか」
午後の鍛錬が終わって、道場から奥座敷へと帰る途中、小さな主にいきなりそう言われた。
「・・・は?」
意図するところが判らず固まったら、「いいたくないか」と、不満そうな、そして微かに寂しそうな顔で言われた。
「うそでもいい、といったのにな」
ふん、と、鼻を鳴らして、・・・すたすたすた。
「ちょ・・・っ、お待ちください」
追いついて、その手を取るが、主は頑なに、顔を背け、手を振りほどこうとする。
「急に言われました故、失礼をいたしました。ご機嫌を直して戴けませんか」
「いい!!もういい!こじゅうろうのばか!」
逃れようと尚も暴れるので、その小さなからだをひょい、と抱き上げる。顔を覗き込むと、案の定真っ赤な頬をしていた。
「・・・っ!!!!なにをする!」
「好きですよ」

ああ、そうか、今日は。

本当は、貴方が、祝福されるはずの日。
この世に生を受けてくれて、ありがとう、と、言われる日。
ふわふわの砂糖菓子みたいに、みんなから愛される筈の日。

多分、俺じゃない、あのひとに、言われたかったことば、なんでしょう?
避けられ蔑まれ疎まれ、あからさまな敵意を剥き出しにされて尚、どうしても捨てられない、欲しい、たったひとりの温もり。
もっと幼いころは、享受出来ていた筈の。
そのひとから、言われたかったんでしょう?

でも、「嘘でもいい」なんて。
冗談じゃない。

こんなに、貴方に、めろめろの小十郎に、なんてこと言うんですか。

誰よりも、何よりも、到底ことばなんかで追いつかないほど、
「好きですよ、梵天丸さま」

貴方が求めているのが、自分からのことばじゃないと判っていても。
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(20091202/ナガノ)

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