とろけてハニー




あの、ぶっちょーづらをなんとかしてみたい。
最近の梵天丸の希みは、それだ。歩きながら、『ぶっちょーづら』をみつめた。
視線の先には、傅役として先日やってきた、片倉小十郎景綱そのひとが、手を引いている。最近ようやく奥座敷の外に興味を示した梵天丸を、ときどきこうやって散歩に連れ出してくれていた。
今日は久しぶりの遠出だ。と言っても、庭を一周するだけだが。
『ぶっちょーづら』が崩れるのは、せいぜい悪戯をしたときか、稽古や学問の時間を意図的に忘れたときくらい。・・・つまり、梵天丸が知っている小十郎の表情は、『ぶっちょーづら』か『はんにゃ』か、であった。
それでも、時々、いつもの顔以外が見たくて、怒らせてしまう。
(ぶっちょーづらと、はんにゃいがいのかお、しないのか、こいつは)
視線に気付いたのか、小十郎が「どうしました?」と聞いてくる。急に聞かれたので、梵天丸は焦る。・・・まさか、こころで思っていたことをそのまま話す訳にもいかず、
「・・・みとれてた」
とだけ、言った。言ってから、
(あれ?みとれてた、っていうのはなんかへんかも)
と思って、訂正しようとしたのだが、
「・・・こじゅうろう??」
見上げた傅役が、見る見る顔を真っ赤にしていくので、吃驚して固まってしまった。
「ど、どうした」
「いえ、梵天丸さまが急にそういうことを仰られると、・・・小十郎は、少し困ります」
そう言って、・・・ふわりと、笑った。
「・・・っっ!!!こじゅうろう!!」
「はい、」
「そのかおははんそくだ!おまえは、ぶっちょーづらとはんにゃだけでいい!!」
「・・・は???」
訳が判らずに、困った顔の小十郎の手を振りほどいて、梵天丸は頬を朱に染めて駆け出した。
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(20091115/ナガノ)

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